ホーム ≫ 【本の紹介】『パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』(渡邉哲也、徳間書店、2016年)

【本の紹介】『パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』(渡邉哲也、徳間書店、2016年)

【本の紹介】『パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』(渡邉哲也、徳間書店、2016年)

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『パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』(渡邉哲也、徳間書店、2016年)  

 

【まとめ】

今年4月のパナマ文書漏洩事件を受け、翌月5月に出版されたパナマ文書解説本。

著者はこの問題を長く研究している経済評論家で、

国際的な租税回避問題の経緯・背景をコンパクトに、しかし急所を抑えることができる。  

 

今年も残すところあと2ヶ月となりました。

1人の会計事務所職員として2016年を振り返るならば、 今年はリオ・オリンピックの年ではなく、

「パナマ文書」の年だった、というべきなのでしょう。

今回はこの「パナマ文書」に関する本を紹介します。

 

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『パナマ文書 「タックスヘイブン狩り」の衝撃が世界と日本を襲う』(渡邉哲也、徳間書店、2016年)  

 

パナマ文書とは、パナマにある「モサック・フォンセカ」(Mossack Fonseca)という法律事務所によって

作成されたもので、 これにはこの事務所が関わる1970年台からの40年にもおよぶ、

オフショア金融センターを利用する企業や人の取引情報が記載されています。

漏洩したのは4月ですが、この本の出版は5月。

いくらなんでもこの出版は早すぎる!…と思っていましたが、それには理由がありました。

著者の「おわりに」から引きます。

 

 パナマ文書が報じられた際の私の印象は「何を今さら、でもついにやるのか」であったといえる。メルマガの情報発信と著作の情報集めのため、日々、海外メディアソースとOECDやG20などの声明やレポートなどを定点観測してきた私にとっては、すでに古い話であったのだ。であるから、FATFなどの規制強化は過去の著作に頻繁に出てきた話なのである。

 

   じつはこの問題、2008年のリーマンショック前後から対策が進められており、2013年7月19日にOECDが「税制の隙間を塞ぐ:OECD、税源侵食と利益移転に関する行動計画(Action Plan on Base Erosion and Profit Shifting)を開始」と発表した時点で答えが見えていたからである。しかし、一気に進めれば経済的マイナス影響も強くなるため、段階的に進められてきただけなのである。 (本書203頁)

 

 世界的な趨勢としては、このような情報がいつ流出してもおかしくない状況だったようですね。

ここまで言い切ってしまうだけあって、本書はコンパクトにこの問題の背景・経緯がまとめられており、

短時間で学ぶことができました。

 その一方で、「ダブル・アイリッシュ」「ダッチ・サンドイッチ」などの具体的な租税回避の方法についての

簡単な説明もあるため、この問題についての基本的な知識を得ることができます。

 

 パナマ文書の漏洩が重要なのは、

この文書の内容が単に租税回避のスキャンダルに係るものだからでなく、

国際的なマネーロンダリング問題、特にテロ資金供与についての情報だからです。

この方面については、1989年の設立以来、

FATF(金融活動作業部会:Financial Action Task Force on Money Laundering)が

くり返し各国に情報公開などの勧告を行ってきました。

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<FATFの勧告、イメージ>

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、日本でも水面下では問題になっていました。

有名なところでは、武富士の相続税問題。  

 

 武富士元会長が「ダッチサンドイッチ」と呼ばれる手法により、

1998年に行った相続税の租税回避行為について、 国税庁が最高裁で敗訴(2011年)した事件です。

これ以降、法律が大きく改正され、逃げられない仕組みが構築されつつあります。

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逃げられないゾ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 たとえば、2013年末以降、毎年12月31日時点で5000万円をこす海外資産を持つ個人は、申告義務を負うようになった。申告漏れが見つかったり、国外財産調書に記載がない場合には加算税の課税率が5%高くなる。また、虚偽記載や意図的に提出しなかった場合などには、1年以下の懲役または50万円以下の罰金となる。もちろん刑事罰であるから、罰金は軽くても家宅捜査の対象となりうる。  

 

 さらに、2015年7月1日からは、国外転出するときに1億円以上の有価証券などを所有している者は、その含み益に所得税の課税が行われることになったため、確定申告が必須となった。また、同じく1億円以上の有価証券などを所有している資産家が、国外に居住する親族などに有価証券等の贈与を行う場合にも、課税対象となることが決まり、確定申告の義務が生じることとなった。 (本書29, 30頁)  

 

 とはいえ、日本のメディアではほとんど報じられておらず、大手の新聞社でも2015年ころまで仲介する法律事務所の提灯記事を書いており、これと並行して一部のコンサルタントなどが相続対策と称して、顧客の無知を利用しタックスヘイブンを利用したスキームを高い値段で売りつけていたわけである。  

 

 本書で述べているように、タックスヘイブンを利用した租税回避は2014年の確定申告から海外資産5000万円以上の申告義務が始まり、2015年7月に「国外転出時課税制度」(通称、出国税)が開始された時点でスキームとしては終わっている話でしかない。 (204頁)

 

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終わってるゾ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

個人的には、国内動向が世界の動向の影響を受けていることが興味深かったです。

近年の税制改正が、「発展・拡大」の方向ではなく、

「インバウンド・囲い込み」の方向を向いていると感じていましたが、

FATFのような世界的な動向を知り、深く納得しました。

BEPSの問題に取り組むためには、まず国内の資産・所得を把握することが必要ということでしょう。

近年、富裕層への監視が強化されているのもこれを裏付けていると思われます。

本書と合わせて、 志賀 櫻氏の『タックス・ヘイヴン -消えていく税金』(岩波新書、2014)なども合わせて読むと、

この問題について理解が深まるのではないでしょうか。 

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志賀 櫻氏の『タックス・ヘイヴン -消えていく税金』(岩波新書、2014)

 

(スタッフ: 佐藤 龍)

確定申告、節税できるかも?

 所得税の確定申告期間が迫ってきています。本年の申告期間は、2月16日(火)~3月15日(火)までです。みなさん、準備はお済みでしょうか?

 

 さて、今日は意外に見落としがちな節税のポイントをお話しします。

 所得税の計算上、所得控除の一つとして、「障害者控除」というものがあります。申告をする本人が障害者である場合や、その家族が障害者である場合に、一定の所得控除が受けられるのです。

 一般に、所得控除が受けられる障害者に該当するかどうかは、その人が「障害者手帳」を持っているかどうかで判断します。

 ところが、障害者手帳を持っていない方でも、場合によっては障害者控除が受けられるのです!

 65歳以上で寝たきりや認知症など一定の状態にある方の場合、市町村に申請を行うと「障害者控除対象者認定」を受けられる場合があります。

 

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 具体的にいうと、認知症や身体的な老化等で市町村の要介護認定を受けている方は、「障害者控除対象者認定」を受けられる可能性があります。ただし、認知症なのか、身体的介護が必要な方なのかで認定基準が異なったり、市町村によっても判定基準が多少異なったりしますので、実際に市町村に問い合わせて頂くのが一番確実です。

 なお、市町村にお問い合わせの際は、税金関係の部署ではなく、要介護認定等を行う部署に問い合わせてください。

 このようにして「障害者控除対象者認定書」をもらうと、所得税の計算上、一般の障害者で27万円、特別障害者に該当すると40万円の所得控除が受けられます。

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 さらに、最大5年間、過去にさかのぼって「更正の請求」(税金が戻ってくる場合の申告のやり直し)ができますので、かなりの額の税金が戻ってくるかもしれません。

 ぜひ一度、ご検討ください。

 【スタッフ:松下】

「日本一明るい経済新聞」に記事が掲載されました!

難波事務所の所長、難波孝朗のインタビュー記事が「日本一明るい経済新聞」10月号に掲載されました!

→ インタビュー記事へ

 

掲載されたのは、新聞の1面です! 目立ってます!


明るい新聞

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、この取材の際の様子がYoutubeにUPされています。

 

 

難波事務所はこれからも、目標・努力・達成のパターンを通じて成長を続けます!

皆さま、ご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いいたします。

 

なお、「日本一明るい経済新聞」についてお知りになりたい方は、下記のURLをご参照ください。

 http://www.akaruinews.com/

 

【判例】 非上場株式の評価に関する新たな視点 -アートネイチャー事件の射程-

会計事務所にとって、「取引相場のない株式」の評価は永遠のテーマです。

 

非上場会社の会社オーナーがなくなったときに、相続財産としてのその会社の株式を「相続」する場合。相続以外でも、オーナーの生前に事業承継を考えて後継者へ「譲渡」する場合。

他にも、株主から会社へと株式の「買取請求」により「譲渡」する場合や、相続により取得した株式に関して、会社から株主へ「売渡請求」により「譲渡」する場合・・・決して頻度は高くないものの、これらの場面は会社の経営権に影響する株式の問題であり、会社の経営状況によっては多額になることもあるため、法的手続きとともにその評価には慎重を期す必要があります。

 

しかし、ここで大きな問題があります。

それは、この評価方法について、条文上は「時価」とあるだけで、法律としては具体的なアプローチが定められていないことです。具体的には「財産評価基本通達」という「通達」で定められているのですが、通達は行政組織内部における上級行政機関から下級行政機関への命令であり、原則として法規の性質をもつものではありません。

 

財産評価基本通達によると、取引相場のない株式は、同族株主は原則的評価方式(類似業種比準方式又は純資産価額方式:評価額高め)、その他の株主は特例的評価方式(配当還元方式:評価額低め)によるのが普通です。

 

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しかし、上述のとおりこれはあくまで通達の定めであり、法的拘束力はないので、通達に定められている方法以外の他の評価方法で「時価」が算定できるのなら、その評価方法による評価額も認められるべきです。

 

実際、この評価方法については会社法上も議論になっており、様々な評価方法が提案されています。類似会社比準方法、DCF法、配当還元方式、収益還元法、簿価純資産法、時価純資産法・・・さらに、先に挙げた財産評価基本通達にある類似業種比準方式、純資産価額方式、配当還元方式と合わせ、驚くほどたくさんの評価方法に関する選択肢があることがわかります。

 

取引相場のない株式の「時価」は、その会社のその時点の状態を考慮し、上記の評価方法をそれぞれ吟味していずれかを選択し、評価額を算定する・・・そう考えるのが正当であるように思われます。

 

ところが、必ずしもそうとはいえないのが実際のところです。

納税者側が算定した評価額と、課税当局が算定した評価額が異なる場合、裁判所が支持するのは大体において課税当局による評価額、すなわち財産評価基本通達に定められている評価方法です。

もちろん争う事実はそれぞれ異なるのでひとくくりにすることはできません。

しかし、このような傾向が続くと、条文上の「時価による」という文言は形だけのものであり、もはや形而上学的な概念となった「時価」の算定などに労力を費やさず、唯々諾々と財産評価基本通達に従っていればよい・・・おそらく、非上場会社の株式の評価について真剣に考える人ならば、だれでも一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。  【注1】

 

なお、財産評価基本通達における配当還元方式と、会社法の議論における配当還元方式は全く別の評価方法です。後者の配当還元方式は、会社法の権威である江頭憲治郎先生が妥当な評価法として認めたとされたこともあり、両者の「意図的/非意図的なすり替え」が起こる土壌が存在したことについて言及されています。【注2】

 

そんな中、今年の2月に画期的な判決が出ました。

 

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アートネイチャー事件(アートネイチャー第三者割当増資に係る株主代表訴訟事件)

一 審: 東京地裁 H24. 3. 15  原審: 東京高裁H25. 1. 30 最判: H27. 2. 19

 

【概要】

平成16年3月、当時非上場会社であった株式会社アートネイチャーが、1株あたり1,500円で計4万株の新株を発行したことに対して、有利発行をしたことを理由として取締役の任務懈怠を理由に損害賠償責任として2億2,000万円の支払いを求めた株主代表訴訟。

損害賠償責任を認めた一審を取り消し、一審を相当とした原審を破棄。

 

アートネイチャーというと、「アデランス対アートネイチャー事件」という、有名な事件がありますが、それとは全く関係はありません。

 

最高裁の判決は、被告である取締役側の逆転勝訴。当時の新株発行価額の1,500円は「特ニ有利ナル発行価額」には当たらず、相当の価額であるとされました。

本判決は非常に興味深いので、少し長くなりますが判決理由の原文を一部引いておきます。

 

理由4(1)

非上場会社の株価の算定については、簿価純資産法、時価純資産法、配当還元法、収益還元法、DCF法、類似会社比準法など様々な評価手法が存在しているのであって、どのような場合にどの評価手法を用いるべきかについて明確な判断基準が確立されているというわけではない。また、個々の評価手法においても、将来の収益、フリーキャッシュフロー等の予測値や、還元率、割引率等の数値、類似会社の範囲など、ある程度の幅のある判断要素が含まれていることが少なくない。株価の算定に関する上記のような状況に鑑みると、取締役会が、新株発行当時、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額を決定していたにもかかわらず、裁判所が、事後的に、他の評価手法を用いたり、異なる予測値等を採用したりするなどして、改めて株価の算定を行った上、その算定結果と現実の発行価額とを比較して「特ニ有利ナル発行価額」に当たるか否かを判断するのは、取締役らの予測可能性を害することともなり、相当ではないというべきである。

したがって、非上場会社が株主以外の者に新株を発行するに際し、客観的資料に基づく一応合理的な算定方法によって発行価額が決定されていたといえる場合には、その発行価額は、特別の事情のない限り、「特ニ有利ナル発行価額」には当たらないと解するのが相当である。

(下線部及び当該部分番号は佐藤による)

 

本記事の内容を考えると、この判決がいかに画期的であるか、おわかりいただけると思います。特に、下線部をつなげて読むと、取締役が行った「合理的な算定方法を尊重する」と解釈できます。非上場会社の株式の時価の算定は慎重に行うべきであり、その過程もきちんと評価されるのだ! と希望を抱くことができます。

 

・・・とはいえ、これが最高裁判決によって、上述の非上場株式の評価をめぐる傾向が一変するとは思えません。その理由は2つあります。

 

1.

本事件で争われている「評価」とは、あくまで「非上場会社による株主以外の者への新株発行」時の「評価」であること

 

2.

「客観的資料に基づく一応合理的な算定方法」の該当性や、 「特別な事情」の有無などについては明確な基準が提示されず、個別に検討すべきであること

 

また、本非上場株式の評価をしたのが原告、被告ともに私人であり、国税庁などの税務当局との争いではない事実も、本判決に影を落としているようにも思えます。

 

いずれにせよ、本判決は「結果論となりがちな非上場会社の株式価値(公正な価額)の裁判所による事後的な実質的判断という一審及び原審のアプローチを退け、新株発行時の取締役による発行価額決定手続きの合理性をその判断の基準とする」ものであり、「後知恵的に当時の「客観的な」株式価値を裁判所が決定すること」を否定した判例として、重要です。【注3】

上述の留保は付されるでしょうが、取引相場のない株式の評価をめぐる裁判において、今後言及されていく判例であると考えられます。

皆さん、相続や事業承継スキームにおいて、取引相場のない株式を評価する際はくれぐれも慎重になさってください。そして、もしも不安が残るようでしたら、難波事務所までご相談ください!

(スタッフ 佐藤龍)

 

【注1】

取引相場のない株式の評価の問題については多数の論文があります。代表的なものとしては、例えば以下のものを挙げておきます。

・金子宏「財産評価基本通達の合理性──同族株主の取得した取引相場のない株式の評価に関する二件の裁判例の検討」(『租税法理論の形成と解明 下巻』有斐閣、2010年)

・渋谷雅弘「種類株式の評価」『租税法の基本問題』674-693頁(有斐閣、初版第1刷、2007)

・渋谷雅弘「相続税における財産評価の法的問題」『公法学の法と政策 上巻』691-711頁(有斐閣、初版第1刷、2000)

・山田和江「取引相場のない株式の評価に関する会社法と税法の接点 」『納税者保護と法の支配 -山田二郎先生喜寿記念』135-175頁(信山社、第1版第1刷、2007年)

・江頭憲治郎「取引相場のない株式の評価」法学協会編『法学協会百周年論文集第3巻民事法』445-484頁(法学協会、初版第1刷、1983)

・今村修「株式評価の歩み」税大論叢第32号(1998)

 

【注2】

この経緯については、牧口晴一・齋藤孝一『非公開株式譲渡の法務・税務(第4版) 』中央経済社、 2014年(422-449頁)を参照。

本書は、非公開株式の実務上の問題点について、その歴史的経緯や具体的な解決方法がわかりやすく説明されていてオススメです。

非公開株式譲渡の法務・税務

第4版、出ました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

非公開株式譲渡の法務・税務(第4版)

 

【注3】

アンダーソン・毛利・友常法律事務所 会社法 / M&Aに関するニュースレター

「アートネイチャー事件最高裁判決 (2015年04月13日)」 より。

9月末発売決定!

【難波の本、9月末発売決定!】

以前からお知らせしていました難波孝朗の著書の発売が決定しました!

詳細は追ってお知らせしますが、9月末には出版できる予定です。

出版の暁には、通販サイト「Amazon」でご購入いただけます。

もうあとひと月、お待ちください。

 

書名も決まりました。題して、

知って得する相続税--増税時代を生き抜く節税のノウハウ--』です。

表紙デザインも決定しました。

こんな感じです。 ……いかがですか?

知って得する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なかなかさわやかな表紙に仕上がりました!

表紙のデザインは、京都で装幀を中心に活躍されているデザイナー、白沢デザイン様にお願いしました。

さすがにプロの仕事ですね! 実際の本を早く手に取ってみたいです。

 

今回は、内容も少し見ていただきますね。

まずは「まえがき」から。

「まえがき

税金は難しいという声を聞きますが、その税法をできるだけ分かりやすく説明させていただきます。その一つとして、今回は相続税を中心に取り上げます。

 相続税は、平成27年1月1日より、増税が実施されました。相続税の基礎控除が減額され、税率がアップしました。

 相続税の課税対象者は、平成26年までの税制の下では、100人のうち約4人でしたが、……続きを読む……

 

で、本の中では、難波孝朗税理士扮する「なんちゃん先生」ほか、楽しい登場人物が分かりやすく相続税を解説していきます。(「登場人物紹介」参照。)

皆さまのお役に立つ「コラム」記事や、実用的な資料集も充実しています。

この大増税の時代、お手元にぜひ1冊どうぞ!

【スタッフ:松下】

【本の紹介】【判例】「長崎生保年金二重課税事件」のインパクト

江崎 鶴男

 

 

皆さんこんにちは。

東芝の「不適切会計」事件には驚きましたね。
会計業務に携わるものとして、襟を正す思いです。

脱税・粉飾は確かに大きな事件ですが、租税法には、それ以外にも重要な判例があります。
今回は、そのうちの一つ、「長崎生保年金二重課税事件」を紹介します。

(原審)長崎地裁:平成18年11月7日、福岡高裁:平成19年10月25日、最判:平成22年7月06日

 

 

今年の平成27年の1月1日から、基礎控除額の引下等が盛り込まれた改正相続税法が施行され、

世間では去年から相続税の話題が盛んです。
相続で不動産を取得したときには「時価」で評価されて相続税が課せられて、
その不動産を売却(譲渡)したときも「時価」でその不動産を評価して所得税が課せられます。

さて、皆さんは不思議に考えたことがありませんか?
これは相続税と所得税の二重課税ではないのか、と。

この問題について、租税法では、次のような関係になっています。

 

被相続人死亡時  →  相続税 (一時・偶発的な所得に対する課税。所得税は非課税)

物件売却時    →  所得税 (譲渡所得…被相続人の取得時からのキャピタル・ゲインに対する課税)

 

つまり、相続時に取得した財産に対する所得税は非課税とされており(9条1項16号)、

二重課税にならないような課税体系が構築されていることがわかります。

 

ところが、この体系からこぼれ落ちる課税関係がありました。

それが「年金特約付き生命保険」、一般的に「相続等年金」と呼ばれているものです。

一連の裁判では、この「相続等年金」の毎年の「受取額」と「元本部分の金額」の差額への課税関係が争われました。

結果、国税庁は過去30年にわたって行われていた、毎年の年金額を雑所得の課税対象とする取扱いが誤りであったことを認めました。

実務的な対応として、 最高裁の判例通り、差額部分の一部のみを課税対象とし、

改正法施行日から過去10年分の還付を認めるという、異例の措置が取られたのです。

 

正確には、「更正の請求」の規定通りの5年間に、

「特別還付金」として5年間の請求可能期間(平成12年分~平成17年分)が加えられました。

ただし、この「特別還付金」の請求期間は、改正法施行日の1年後である平成24年6月29日までとなっていますので、

平成27年7月現在では請求は不可能となっております。 ご注意ください。

【参考情報】 特別還付金の支給制度等について(国税庁) 

 

この事件及び判例は、2つの意味でとても大きな事件であると考えられます。

1つ目はその内容です。

上記のように、この裁判は所得税法9条1項16号の解釈に新たな光を当て、

相続税と所得税の関係についての根本的な理解の再考を促しました。
この事件は当時も非常に大きく扱われ、法律雑誌「ジュリスト」でも特集が組まれたほどです。

 

『ジュリスト 生保年金二重課税判例のインパクト 2010年 11/1号』、有斐閣

ジュリスト

ジュリスト、初めて買いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2つ目は、原告の立場、裁判の進め方です。
これほどの大きな影響のあった裁判ですが、原告は長崎の一主婦である相続人で、

220,800円の年金の源泉徴収額をめぐるものでした。

当裁判の補佐人となった税理士はその相続を扱った税理士で、税務訴訟専門の事務所のような、数十人の弁護士・税理士が所属するような大きい事務所ではありません。そんな中、担当税理士が「税理士補佐人制度」を積極的に活用して、最高裁の判例まで辿り着いた事件でもあります。
この裁判の過程は実にドラマチック。

最高裁判決に至るまでの逆転劇、市井の税理士の情熱、原告の税理士への信頼などは、

話としても実に興味深いものがあります。
これについては、担当税理士自らの筆によるこちらの本があります。

 

『長崎年金二重課税事件―間違ごぅとっとは正さんといかんたい!』、江崎鶴男、清文社、2010年
(何回読んでも、サブタイトルを正しく書くことができません・・・)

江崎 鶴男

「逆転勝訴」です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このように、大規模な粉飾や脱税事件ほどの派手さはありませんが、

租税法の事件・判例は、時に一般市民のオカシイ、という判断が、

それまでの慣例を覆すことがよくあります。

このような判例を学ぶことが税務訴訟を学ぶ醍醐味である、と言えます。

 

最後に、所得税法を課税実務からでなく、法律の面から解説する本として、

次の本を紹介します。

 

 

『弁護士が教える 分かりやすい「所得税法」の授業』、木山博嗣、光文社新書、2014年

木山博嗣

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この本には、「長崎生保年金二重課税事件」以外にも興味深い判例がたくさん挙げられており、

実際にあった判例を考えながら所得税の課税体系を学ぶことができる本です。

「トクする/ソンする」といった、単なる節税面からではなく、

所得税法を理論的に考えたい方への入門書としてオススメいたします!

【スタッフ 佐藤龍】

相続税増税!早めに対策!

1.相続税の課税対象増加

     平成27年1月1日から相続税の基礎控除額が減額されました。

     3,000万円+600万円×法定相続人】となり、相続税の納税義務者が、

     大幅に増大しております。難波総合事務所においても相続の相談件数は

       昨年に比べて倍増しております。

 

2.相続税の対象となる相続財産

          ・土地(宅地、田、畑、山林など)

          ・家屋(自宅、収益アパート、倉庫など)

          ・事業用資産(機械、器具、製品、商品など)

          ・現金、預金

          ・有価証券(株式、出資金、投資信託など)

          ・家庭用動産(家具、貴金属、骨とう品)

          ・その他(生命保険金、退職金、ゴルフ会員権、貸付金など)

 

3.非課税財産

      ・墓地、仏壇など

    ・国や地方公共団体、特定の公益法人に寄付した財産

       ・生命保険金のうち500万円×法定相続人の数

       ・死亡退職金のうち500万円×法定相続人の数

 

4.相続対策

   ①遺産分割対策

    どの財産を誰がどれだけ受け取るかを、前もって、決めることが重要です。

    相続が発生して、兄弟でもめるケースがあります。

    やはり早めに遺言書を書くことがスムーズな相続につながります。

    特に不動産や同族会社の株式など、

分割しにくい財産についてはきちんと分割方法を決めておきましょう。

    遺言書には自筆証書遺言や、公正証書遺言などがありますが、

    公正証書遺言の方が安心です。

   

   ②財産の評価減

    自宅や事業用宅地を持っている場合、小規模宅地等の特例が適用されます。

    自宅の場合、一定の要件のもとにその敷地について330㎡まで、80%評価減が可能です。

    事業用宅地も同様に400㎡まで80%評価減が併用して可能です。

    収益マンションやアパートは、人に貸すと、建物や土地の評価額を

    大きく引き下げることが可能です。

   ③納税資金の確保

     相続税を相続開始後10ヶ月以内に納める納税資金が必要となってきます。

     ㋑生前贈与により1人110万円まで贈与して、贈与税の非課税限度額を利用しながら

      納税資金を確保できます。

     ㋺生命保険金により相続税の納税資金を確保することも可能です。

     ㋩死亡退職金により相続税の納税資金を確保することも可能です。

     ㊁現金預金、株式、土地建物などを三分割にして、その中で

      納税資金を確保しましょう。

 無題

 

 

     相続税が大きな問題となります。事前に難波総合事務所にご相談ください。

     難波総合事務所は二次相続も考えます

     適切なアドバイスをさせていただきます。

 

                                        【難波孝朗】

 

 

 

 

 

 

 

これから変わる税制!!

H27年1月

【相続税】

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 基礎控除を4割縮小

 

 

 

 

所得税

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最高税率40% → 45%

 

 

 

贈与

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住宅取得資金の非課税枠 

  1000万円 → 1500万円

 

 

消費税8%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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H27年4月

贈与

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  結婚・出産・子育て費用で

  非課税枠 1000万円 創設 

 

 

 

 

 

法人

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実効税率を 2.51% 引下、

翌年と合わせ2年で 3.29% 引下!

 

 

 

 

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H28年1月

給与所得控除

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年収1200万円超の会社員は

230万円に縮小

 

 

 

NISA

 

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  1. 非課税投資枠を拡大100万円 → 120万円

  2. 非課税投資枠80万円の子ども版NISA創設

 

 

 

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H28年10月

贈与税

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  住宅取得資金の非課税枠3000万円に拡大

  注意! 消費税率10%が適用される方

 

 

 

 

消費税10%

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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H29年1月

給与所得控除

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  年収1000万円超の会社員は220万円に縮小

 

 

 

 

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H29年4月

消費税 

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  消費税率 10% に引上

 

 

 

 

※ H27.4月~ 改正内容  

 結婚・出産・育児非課税枠創設  1人あたり1000万円

 

 【 適用時期 】

 平成27年4月1日~平成31年3月31日

 

 【 適用対象者 】 

 20歳以上50歳未満の子や孫

 

 【 非課税対象 】

 ・結婚式の費用、新居の家賃(結婚関係300万円まで)

 ・出産費用、不妊治療費用

 ・子どもの治療費、ベビ-シッタ-代、保育費用

 

 【 非課税対象外 】

 ・新居の家具や家電、ベビ-用品

 ・結婚関係費用には婚活等の参加費、食事代

 

【 課税時期 】

 子や孫が50歳になれば、その時点で口座に残っている資金は課税される。

祖父母や両親が亡くなった時も、使い切っていな資金は相続税の課税対象となる。

 

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 税制改正によって増税になる部分と非課税枠の拡大等があります。

適用できるものは使って節税対策しましょう!!

 

 

 

 

小規模宅地等の特例について

1.小規模宅地等の特例とは?

相続する自宅や事業用店舗・工場が立つ土地の評価額を80%減額できる特例です。不動産の評価額を
圧縮して、相続税を大幅に節税できます。
自宅や事業用店舗・工場に相続税が発生すると、最悪の場合、相続税を払うために自宅や店舗等を売却
するという悲劇が起こります。このような悲劇が起こらないように、自宅や店舗等にかかる相続税を大幅に
軽減する仕組みがこの制度です。

 

2.どのような場合に特例の適用があるのか?

特例の対象となる主な土地
①特定居住用宅地……故人が生前住んでいた自宅
②特定事業用宅地……故人が事業に使っていた店舗や工場など
③貸付事業用宅地……故人が他人に貸していた賃貸アパートや駐車場など
その他、減額が適用される要件などを下記にまとめました。

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3.2015年の改正点

①特定居住用宅地の適用面積の上限が240㎡→330㎡へ拡充!
②居住用と事業用の適用面積が、合計400㎡まで→合計730㎡までに拡充!
③完全分離型の二世帯住宅でも、特例が受けられるように!

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※貸付事業用宅地については、従来通り200㎡限度で選択適用です。

これまでは、自営業や中小企業を営む方が亡くなった場合、自宅と店舗のうち一部は特例が使えず、
高額な相続税を支払うことになり、事業承継がスムーズに行えないケースも多かったのです。
この改正は自営業や中小企業を営む方々にとってはたいへんな朗報です。

 

4.結  論

小規模宅地等の特例は、土地の評価を80%減額するという大きな効果を持つ特例です。
この特例が使えるかどうかで税額が大きく変わってきますので、適用要件を必ずチェックしましょう。
お問い合わせ頂ければ、個々の状況に合わせたお話をさせて頂きます。お気軽にご相談ください。

『別冊宝島2229 損をしない裏ワザ満載! 賢い相続の教科書』より

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