【本の紹介】
『思考の型を身につけよう――人生の最適解を導くヒント――』
(飯田泰之著、朝日新聞出版、2013年)
<内容の概略>
・大学で学ぶべきものは何か?
→その専門分野の「思考方法」=「型」である。
→社会に出てからの思考のベースを学び、人生を切り開く方法を身につける
・「型」にはまった思考になってまずいのでは?
→「守破離」だ! 守なくして破はなく、破なくして離はない。まず「型」を身につけよう!
・本書で学ぶ思考の「型」の基本形
①問題を絞り込む
②仮説発見のためにデータを観察する
③問題を処理可能なレベルまで分割・単純化する
④作業仮説を立てる
⑤データを用いて仮説を検証する
⑥総合的な結論を導く
・上記の「型」の運用においての注意点
★仮説を立てる際に「論理再現性」&「反証可能性」を満たす仮説を作ろう。
★分割・単純化の際MECE(相互排除的かつ網羅的)を意識する。
★データを観察する際、因果≠相関、4つのマトリックス、などを意識する。
などなど…。
<使えそうな“ワザ”をご紹介>
1.MECEの考え方
Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive :相互排除的かつ網羅的 の略。
何かを分類した時に、2つ以上の項目に当てはまるものはなく(相互排除的)、いずれにも当てはまらないものもない(網羅的)、という分け方です。
・MECEな分類の例
会社にいる人を分類
30歳未満/30代/40代/50代/60歳以上・MECEではない分類の例
会社の業務の分類
個人向け営業/法人営業/仕入/直営店管理/カスタマーサポート
…重なった業務もあり、抜けている業務(在庫管理、人事管理、広告など)
もある。
2.相関≠因果 を意識する
・因果関係:原因と結果のこと。ある要因Aが原因でBという要因が生じる
・相関関係:要因Aが発生するとき(したあと)には要因Bも同時に生じる
知りたいのは因果関係です。しかし、データの観察から分かるのは、どんな高度な統計的テクニックを用いても、相関関係だけなのです。
相関関係を因果関係と捉えてしまいがちですから、気を付けましょう。
<例>
状態X:ナマズが暴れる
状態Y:地震が起こる
→状態Xが出現したら、必ず状態Yが起こる…ナマズが地震の原因だ!
XとYは、確かに相関関係にあるが、因果関係とは限らない(図参照)。
3.なんらかの「方策」の効果を知るには、4つの情報が必要
よく見ますよね、こんな広告。
「税理士試験の合格者の60%がX原学園の税理士講座受講生です!」
ではこれで、X原学園が優秀な予備校だとわかるでしょうか?
ことの真偽を確かめるには、次のマトリックスを考える必要があります。
上記の宣伝文句は、このマトリックスの「AとC」の部分のみに言及していますね。これでは、この命題の真偽は分かりません。
一般に、上記のような命題がある場合には、上記のマトリックスを作成してその背後に隠れているB、Dの命題を考え、確かめることが必要です。それをイメージするだけで、ずいぶんデータの見方が変わってくるはずです。
<練習問題>
△△のサプリを飲んだら、ダイエットに成功した!
会社の業務で思い切った改革をしたら、利益が大幅に伸びた!
4.「機会費用」の考え方を応用してみる
見落とされがちな費用の筆頭-「機会費用」
→何かを行うために犠牲になるもの・こと・金、のこと。
例えば、バイトをさぼってコンパに行ったら、その費用はいくらか。
バイトに行っていれば貰えたはずの5000円+コンパ会費3000円
-働かずに済んだことによる精神的負担の軽減2500円 = 5500円
この考え方を使って、次の例題を解いてみましょう。
<例題>
あなたの部下は2人います。部下のAさんは1件の契約を結ぶのに、ルート営業では2日、飛び込み営業では4日かかります。もう一人の部下のBさんは1件の契約のためにルートでも飛び込みでも5日かかります。
さて、あなたの部署の成績をUPさせるにはどうしたらいいでしょう?
無能なBさんをやめさせる? いえいえ、あなたにはそんな権限はありません。では、どうしましょう?
Aさんが飛び込み営業で1件契約を取るには、4日営業活動が必要、つまり、その4日にルート営業をしていれば、2件とれていたはず! です。
つまり、機会費用として考えると、
・Aさんのルート1件=飛び込み0.5件(飛び込み1件=ルート2件)
・Bさんのルート1件=飛び込み1件(飛び込み1件=ルート1件)
→Aさんのルート営業の機会費用は低く、Bさんの飛び込み営業の機会費用が低い。
→次のようにすれば、全体の契約件数は上がる!
Aさん…飛び込みの日を1日ルート営業に変える。
→△新規契約0.25件+ルート契約0.5件=+0.25件
Bさん…ルート営業の日を1日飛び込み営業に変える。
→△ルート契約0.2件+新規契約0.2件=±0件
全体では、+0.25件と、契約件数UP!
(スタッフ:松下)